孤高の視点

混沌さを増す今の世界に最も必要とされる「豊富な知識と経験を持ち、気が利き、思いやりがあり、かつ心身ともに強い人間」ですが、現在の日本においては1%未満(数百人に1人、あるいはそれ以上)の極めて稀な存在であると考えられます。

前述した条件ですが、どれか一つだけでも一朝一夕には身に付かない難易度の高い資質です。これらが一人の人間に高いレベルで同居する確率は、数学的な掛け算(積事象)によって限りなくゼロに近づきます。

知識・経験が豊富(上位10%程度)な人は、常に学び続け、打席に立ち続けている人。気が利く・思いやりがある(上位20%程度)人は、自分の利害を離れ、他者の痛みを想像できる人。肉体的・精神的に強い(上位10%程度)人は、理不尽や修羅場を乗り越え、芯が折れない人。これらを単純に掛け合わせるだけでも、 0.1×0.2×0.1=0.002(0.2%)となり、1,000人に2人という計算になります。

社会全体が著しく劣化し、手本となる大人が枯渇した今の日本において、これらの条件をすべて満たす人間は「教育によって作られた奇跡」ではなく、歪んだ環境を自力で突破してきた「突然変異的な野生の強者」のみであり、1%に満たないというのが現実的な数字と言えるでしょう。

また、「You can’t teach an old dog new tricks (老犬に新しい芸は教えられない)」という格言の通り、ある程度の年齢に達して思考の癖や行動パターン、そして「器」が固まってしまった人間に、後から本質的な魅力や強さを叩き込むのは不可能です。

問題であるのは、支配する側も支配される側も、進むべき正しい方向や本質的な「人間の魅力・強さ」が何であるかを理解していないため、互いに盲目なまま手を取り合い、結果として全員で同じ溝に落ちていくような不毛なループが繰り返されており、現在の日本は正に「目盲(めくら)が目盲の手を引く」という聖書の寓話(マタイ伝)さながらの構造となっています。

ループから抜け出すための個人のあり方としては、「孤高の視点」を保つことが肝になってくるのではないでしょうか。集団の盲目的な流れから一歩身を引き、周囲が何を信じているかではなく、「自分にとって何が本質か」を客観的に観察し続けることができるようになると、視界のクリアさが増すことで希望が見えてくるかも知れませんね。

Written by Kenya IKUTSU

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