ソーラーシェアリングとは、営農を続けながら太陽光発電を行う設備です。
「営農型太陽光発電システム」と呼ばれることもあります。
再生可能エネルギーが固定価格買取制度(FIT)の広まりと共に国内で普及していきましたが、その中でも他とは大きく違った発電システムです。
2013年に農林水産省が「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」という通達が出され、全国的に徐々に広がっています。
農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と太陽光発電の両方を行う仕組みで、立体的に土地を利用するため、効率的に収益を高める事ができます。
耕作地の上約3mの位置に、パネルを設置。そのうえに細幅の太陽光パネルを並べ、作物とパネルで光を分け合います。パネルで遮る太陽光の程度(遮光率)は約30%で、作物の生育に支障がないように設計します。
高さ、幅にも十分なスペースを持たせるため、大型の農業機械の妨げになることもありません。
「ソーラーシェアリング」のメリットとして、大きく2つ挙げられます。
①ひとつの土地での収益性を上げる
②栽培環境を整える
①について
上記の説明の通り、「売電」または「自家消費によるコスト削減」の両面から考えられ、いずれの場合でも生産者の収益UPに繋がります。
②については
栽培する作物にもよりますが、ソーラパネルによってできる日陰で作物の品質が良くなるものもあります。
例えば、シイタケ栽培では支柱に遮光ネットを付けることで日陰と湿気を増やして栽培環境を整えるという場合もあります。
お客様からは夏場の暑い時期で作業をするのですが、ソーラーシェリングの屋根が適度に日陰を作るため、母から「作業が楽になった」
との声をいただいたことがあります。
このように作物に合わせて、可能性を広げることのできる仕組みです。
パネルの隙間から太陽光が降り注ぐ様子
農業機械も難なく利用できます
農地は国で保護されているものが多いため、ソーラーシェアリングを農地で行う場合はまず「農地の一時転用」という手続きが必要になります。設置するための支柱(基礎部分)について許可を取る必要があります。
先に述べた2013年より「第一種農地」・「青地」・「農業地区域内農地」も一時転用での設置が可能になりました。
以前は一時転用期間が一律3年とされ、3年ごとの更新時に申請を行う必要がありましたが、近年この期間が10年に延長されました。(特定の条件を満たした場合)
通常の太陽光発電の申請処理に加えて、各地域にある農業委員会の許可が必要となりますが農業委員会共通のガイドラインなどが無いため各地域毎に申請の内容や基準が変わってきます。
そのため、ある程度のノウハウが必要になることが多く、新しくスタートしようとする方にとっては大きな壁となります。
<一時転用に必要な条件>
国に保護されている農地を利用するためソーラーシェアリングの条件には幾つかの厳しい決まりがあります。
◆撤去可能な設備であること
◆必要最小限かつ適性であること
◆作物に適した日照量を確保出来ていること
◆農業機器が利用可能になっていること
◆設備撤去費の支払いが可能であること
主な内容を簡易的に記載いたしましたが、要はしっかり農業を行える事と何かあった場合は速やかに撤去することが条件といえます。
併せて撤去(一時転用の取消)となり得る要件としては
【1】農業が行われていない
【2】収穫された作物が、同じ年・同地域の平均的な単収と比較して8割以上であること
この【1】【2】がとても重要です。しっかりとした農業の準備をせずにFITの売電収入のみに目がいってしまうと作物が全滅してしまった、収量が足りないなどの理由から設備の撤去という最悪の事態を招いてしまうことがあります。
ソーラーシェアリングを始める前にはその点にも気を付けてしっかりとした営農計画が必要になるでしょう。
光飽和点とは
植物では「これ以上の光合成はしなくなる」という光の強さがあります。
一定量の光があれば育ち、強すぎる太陽光は成長に使いきれないということです。
この光量を光飽和点といいます。
ソーラーシェアリングのよくある質問で、
「パネルで太陽光を遮っては作物が育たないのではないか?」
というものがありますが、人間と同じで食べる量には限界があるというわけです。
当然ながら、植物の種類によりこの値というものは大きく変わってきます。
「しそ」や「らっきょう」のような陰性植物(1日1~2時間の日照で育つもの)も
あれば、陽性植物(1日6時間以上の直射日光を好む)ものもあります。
栽培植物に合わせて、パネルの角度を変えることで、日陰の悪影響はまず無くなります。
併せてお話しすると、過剰な日光や暑さは返って植物のストレスになるため、むしろ植物に合わせて適度な日陰を作る方が成長を促すという場合も少なくありません。
植物に不要な光を得てエネルギーに変えているので、植物の成長を妨げるものではないという仕組みです。
岡さん (レストラン虹のいえオーナー)
「採れたての美味しい野菜を提供したい」その思いから、畑のすぐ隣にレストラン「虹のいえ」をオープンしました。ソーラーシェアリングに出会ったのはそのレストランの建設しようとしている時でした。
どうしても農業だけの収入では安定しないことに悩んでいたところ、従来のソーラーパネルに出会い、発電をしながら、そのソーラーパネルの下で鶏を飼う事はできないかと考えたのです。
レストラン建設時の懸念だった収入の問題は売電によって一定の収入源を得ることになり解決しました。
鶏は雑草を食べてくれますし、育てる作物も夏も冬も選定を行えば、問題なく育ちます。
パネルによる若干の日陰によって、収穫時期が長く、ゆっくり収穫できるのがいい点だと感じています。
篠塚さん(ふき・ミョウガ農家)
今活用できていない農地を、今後の活用していくことを考え、ソーラーシェアリングを導入しました。
元々土地が荒れておりましたが、堆肥を入れ、様子を伺い3年経つ頃には収穫量も増加、安定してきました。
荒地のような農地もソーラーシェアリングなら十分利用価値があると思います。また農業経営されている方で後継者がいらっしゃらない方、ソーラーシェアリングを導入することは、農業や作物自体に影響はそんなにありませんので、試してみる価値はあると思います。
小宮さん (椎茸農家)
以前は山で椎茸の栽培を行っていました。檜や杉等の日陰を利用しての栽培方法です。
従来の方法では湿気の維持が難しかったのですが、
ソーラーシェアリングのシステムを導入することで、架台の部分を利用して、遮光ネットを設置し、より椎茸栽培がしやすい今の環境に整えることが出来ました。
手ごたえはこれからですが、より椎茸に適した環境に整えられただけでも、椎茸とソーラーシェアリングの相性はいいと思っています
今井さん (落花生や里芋など栽培)
両親の高齢化がきっかけで脱サラし、農家を継ぐことにしました。営農のためにソーラーシェアリングを開始し、当初は生育に関して心配でしたが、他の露地野菜と変わらず安心しました。
私は落花生を中心に里芋やサツマイモを生育していますが、ソーラーシェアリングの下での生育のほうが、育ちが良かったと思います。実際に収穫量を知れべて見たところ、かなり多く収穫できていました。
私の思うソーラーシェアリングのメリットはこれだけではなく、夏場の強い日差しの中での作業がソーラーパネルが日よけの役割を果たしてくれて、作業も楽になったと感じています。
ソーラーシェアリングを始めて3年。収入も安定し、両親から引き継いだこの土地を守っていけることに嬉しく思っています。
① ソーラーシェアリングって何?
A.ソーラーシェアリングとは、
農地に支柱を立てて、営農を適切に継続しながら上部空間に設置する太陽光発電を行う農業と発電のシェアすることをいいます。
発電した電気は売ることも可能ですし、農業に必要なエネルギーとして使いコストの削減や収穫増に繋げるなどのメリットがあります。
② 農作業機器(トラクター等)は使えるの?
A.はい、大丈夫です。
ソーラーシェアリングを行うためには、支柱の高さ・間隔等からみて農作業に必要な機械を利用できる空間を確保している
ことが条件ですので、その点は設計の際に考慮されます。
③ ソーラーシェアリングの日陰で収量は減らない?
A.ホームページ内にも記載していますが、植物が成長する上で必要となる太陽光は作物によって決まっています。(光飽和点)
過剰な太陽光は作物にとって不必要ですし、むしろ悪影響を及ぼす場合もあります。栽培する作物に合わせた、
適切な遮光率の設定をする等して収量の減少を防ぎます。
作物によってはむしろ収量が上がった、品質が良くなったなどの声も聞かれます。
④ 太陽光「発電」って言うけど、事故とか、感電とか大丈夫?
A.もちろん基本的には安全な設備ですが、洪水や豪雨など自然災害によりケーブルのトラブルが発生するケースが考えられます。
その場合は慎重に行動し、協会までご連絡してください。
⑤ 施工後のトラブル、故障など困ったときのトラブルは?
A.設置完了後も長らく付き合いを続けさせて頂いているお客様が多くいらっしゃいます。
協会にご依頼いただければ安心です。
⑥ 自分の農地を持っていないのですが、ソーラーシェアリングは始められる?
A.農地を所有していなくてもソーラーシェアリングに取り組むことは可能です。
地主から借りた土地を利用して、農家さんがソーラーシェアリングによる営農を行うというパターンがあります。
農林水産省のホームページによると
< 増加する耕作放棄地 >
17年の耕作放棄地面積は、12年より4万3千ha(13%)増加し38万6千haとなった。
増加率は近年鈍化しているものの、1年当たりJR山手線内側の面積の1.4倍の耕作放棄地が増加したことになる。
耕作放棄地面積は琵琶湖の面積の5.7倍、耕地面積の8%にまで達している。
「土地持ち非農家」戸数は増加し続けており、17年には、販売農家戸数の6割の120万戸(12年より9.5%増)にまで達している。
このうち耕作放棄地をもつのは46.1%であり、販売農家の耕作放棄地面積を上回っている。
・・・
というデータが示されており、耕作放棄地の増加に関する問題が記載されています。
耕作放棄地の増加原因として、後継者問題が挙げられます。
これは日本の農業全体の問題であり、各地域においても様々な取り組みがなされています。
青森県では小・中学校から農業に触れる機会を増やしたり、山口県では就農と生活の両方に対して国が補助をするような仕組みの導入を行い、若い人材の確保に努力しています。
なぜ、農業従事者は減っているのでしょうか?
農業に関するイメージについて、一般的には以下のようなことが言われています。
「労働が過酷」、「収益が低い」、「生活が不安定」
農業の意義や楽しさを理解したとしても、やはり生活や仕事の面での充実を図る仕組みが必要なのではないでしょうか?
この解決策として私達はソーラーシェアリングを推奨しています。
< ソーラーシェアリングで変わる農業 >
ソーラーシェアリングを使った農業システムは、今までの農業に対するイメージを大きく変える可能性を秘めています。
収穫量の増加や作業料の大幅削減、そして安定した再現性を創り出します。
太陽光から得られる売電収入、または得られる電力を利用した最新農業システムの稼働で、
農業はよりスマートに、よりビジネスらしくなります。
若い世代が始められる農業を確立させ、見捨てられた土地を収益性のある土地に変えることで、耕作放棄地の問題は解決に近づいていくと考えています。
日本の国土は大部分が森林で、約66%を占めています。また、日当りの良い平地の割合で多いのが農用地で12%、454万haほど。この日本にある農用地のうち、300万haすべてにソーラーシェアリングを導入すれば、国内の総発電量すべてを賄う事も可能です。原子力発電や火力発電に頼らなくても、自然エネルギーだけで電力を賄えるのです。狭い国土で資源の乏しい日本に、再生可能エネルギーだけで電力を補う未来があります。
海外では脱原発の旗のもと、再生可能エネルギーを積極的に導入している動きがあります。
特に台湾や韓国ではこの波が大きく、弊社のソーラーシェアリングを何度も視察に来ており、農地の有効利用と相まって高い関心を示しています。
世界の発電量に占める自然エネルギーの割合は24. 5%です。(約17%は水力発電、風力発電は約4%で、バイオマス発電が約2%、太陽光発電が1.5%)
ちなみに日本では自然エネルギーの発電量は 14.8% (太陽光は4.8%)です。
この数字だけを見ると日本の太陽光発電の取組は進んでいるかのようにも感じてしまうのですが、
太陽熱利用機器の新規導入が増えず、累積導入量は減少傾向にあるという指標があります。
対して世界では太陽熱利用機器の導入が着実に進んでおり、2006年からの10年間で約4倍に増加しているようです。
このままではエネルギー、環境の面から海外に大きく差がつけられてしまうかもしれません。
導入するにあたって
この他にも設備導入にあたりさまざまなハードルが存在しますが、当協会はサポートして参ります。
「ソーラーシェアリング」と私たちについて
私たちは元々、自然エネルギーのスペシャリストとしてこの事業に取り組んできた経緯があります。
特に「地域の活性化」を理念としている会社ですので、営農のという部分にこだわり、
ソーラーシェアリングの推奨を行ってきました。長年の実績からくる自信と技術が私たちの強みです。
私たちの農園「SUNファーム市原」
電創ハウスとは
SUNファーム市原にございます、弊社が開発した、オール電化の鉄骨ビニールハウスです。
6.6mが2棟、奥行きが39mの広さで、ハウスの天井に100Wの太陽光パネルを84枚設置し、8.4KWの発電能力を有しています。
天窓側窓の開閉システムによる換気機能、温度や室温の調整や空気の循環はエアコンや扇風機を稼動します。
苗への液肥供給の為の専用ポンプや自動潅水システムを備え、それら全てが太陽光発電による自家発電でまかなわれており、
発電した電力をトマトの栽培に活用しています。
床は太陽光を98%反射させる特殊なシートを敷き、作物達に満遍なく光を与える構造となっています。
また、一般的なビニールハウスよりも強固な設計を行っており、今回の台風(2018年9月台風24号)でも影響はありませんでした。
ソーラーシェアリングを利用した、他事例について紹介しています
榊(さかき)栽培はソーラーシェアリングとの相性がよく、比較的手間が少ないため農業初心者にもおススメです。特に夏場の暑い日の作業はパネルが日陰を作るため、作業負荷を軽減されます。
元々、山で栽培するのが主流でしたが、山での採取は危険が多く、体力的にも女性や年配の方は難しいとされてきました。しかしソーラーシェアリングを利用した平地栽培ではその点が解消され女性や年配の方でも作業が可能になります。
ブルーベリーはある程度の日陰を必要とするブルーベリーはソーラーシェアリングとの相性がバツグンです。
また養液栽培を組み合わせることで、ブルーベリー本来のポテンシャルを引き出すことができます。
元々、マーケット的にも強みの多い作物のため高い収益性が見込めます。
これがブルーベリー栽培の強みです!
その名の通り、2つの可動軸を使い、自動で太陽の方向にパネルを向けます。
ヒマワリのような動きは、従来の固定式よりも効率よく発電を行うことができます。
太陽の位置に関係なく、最適の角度を保ったまま発電量を最大化していることを指しています。
発電量増加は売電収入や投資回収期間に影響します。(投資回収期間を平均2年以上短縮)