こんな方におススメです・・・
都市型農業やスマート農業が広まっていくおり、水耕栽培等の土を使わない農業の需要が増えてきているようです。しかし、それでもこれから農業をはじめようと考えている方の中には土を使った「土耕栽培」を希望される方もいるかと思います。土への愛着やこだわり、伝統的な農業手法へのこだわりを持つ方も多いからです。
そのような方へおススメです。
土耕栽培のメリット・デメリット
土耕栽培のメリットとしては、「土が中心なので、設備投資が抑えられる」「昔からの手法で地域伝統となっている場合もある」「作物の味が濃厚になる(作物による)」等が挙げられます。
どちらかと言うと、土へのこだわりや伝統を重んじる農家さんが中心ではないかと思います。
逆にデメリットしては、「害虫や菌がつきやすく手間がかかる」「除草・水やりが日々の作業として発生する」「土づくりに技術・労力が必要」「天候の影響が大きい」と言ったもので、農業らしい悩みとなります。
どちらが良いかではなく、一長一短という事で作物や状況等に合わせた農業が望ましいと言えるでしょう。
ソーラーシェアリングと土耕栽培の相性
農業の新しいモデルとしてソーラーシェアリングというものがあります。農業の生産性または収益性をアップさせるものとして期待される仕組みです。
ソーラーシェアリングとは?
ソーラーシェアリングとは、営農を続けながら太陽光発電を行う設備です。
耕作地に於いて地上から3mの位置に藤棚の様に架台を建築、短冊状に太陽光パネルを設置するシステムで「営農型太陽光発電システム」と呼ばれることもあります。
※ ソーラーシェアリングについて詳しくはこちら
作物への影響は?
特に昔ながらの農法を行われてきた方は、パネルによる日光の変化を不安に思うかもしれません。
しかし、この点は多くのデータにより裏付けがあります。
植物が成長する上で必要となる太陽光は作物によって決まっています。(光飽和点)
過剰な太陽光は作物にとって不必要ですし、むしろ悪影響を及ぼす場合もあります。栽培する作物に合わせた、適切な遮光率の設定をする等して収量の減少を防ぎます。
作物によってはむしろ収量が上がった、品質が良くなったなどの声も聞かれますので、心配はいりません。作物に合わせた遮光率を設定すれば、ほとんどの作物に利用することが可能です。
右の写真はソーラーシェアリングのパネル下で栽培したものと、通常の栽培でできた作物との比較です。赤丸がソーラーシェアリングを利用した作物ですが、ほぼ差異は無く、むしろ良く生育しているものもあるというのが分かります。
ソーラーシェアリングのメリット
ソーラーシェアリングと土耕栽培の組み合わせによる代表的なメリットは、「土地の効率的な活用」「自家消費・非常用電源の確保」等がありますが、栽培メリットも多く、以下のようなものが挙げられます。
●土壌乾燥防止、作物葉焼け防止。
●パネルのお陰で炎天下での作業が楽。
●防風・鳥獣ネット設置に支柱が役立つ。
●冬野菜を霜から救う。
単純にパネルによる発電からのメリットだけではなく、パネルの日陰や支柱を使う事で農業そのものにも役立つ設備となります。
増加する耕作放棄地
1年以上耕作が行われていない土地のうち、耕作再開に整地や障害物の除去といった再生作業が不要な場合は「耕作放棄地」、そうでない場合には「荒廃農地」と定義されています。
耕作放棄地は年々増加しており、2015年には42万3000ha(農林水産省資料より)となっております。この農地の有効活用は日本における課題の1つと言えるでしょう。その意味でも農地の再生、農業従事者の回復と言う視点からもソーラーシェアリングは有効であると考えております。
エネルギーと視点で考えた場合、全国農地の10%にソーラーシェアリングを設置した場合(パネル遮光率30%)原発41基分に相当し、環境に優しいエネルギーのインフラとしても役立つ可能性を持っています。
ソーラーシェアリング実施例
当初は生育に関して心配でしたが、他の露地野菜と変わらず安心しました。
私は落花生を中心に里芋やサツマイモを生育していますが、ソーラーシェアリングの下での生育のほうが、育ちが良かったと思います。
私の思うソーラーシェアリングのメリットはこれだけではなく、夏場の強い日差しの中での作業をソーラーパネルが日よけの役割を果たしてくれて、作業も楽になったと感じていて、両親から引き継いだこの土地を守っていけることに嬉しく思っています。
畑のすぐ隣でレストランの開店を計画する中、農業に対する収入面の不安がありましたがソーラーシェアリングにより解決しました。
「パネル下では鶏も飼育しており、雑草を食べてくれるメリットがありました。育てる作物も夏も冬も選定を行えば、問題なく育ちますし、パネルによる若干の日陰によって、収穫時期が長く、ゆっくり収穫できるのがいい点だと感じています」とのコメントです。
土地を有効活用したいと思い、ソーラーシェアリングを導入しました。
「元々土地が荒れておりましたが、堆肥を入れ、様子を伺い3年経つ頃には収穫量も増加、安定してきました。荒地のような農地もソーラーシェアリングなら十分利用価値があると思います。また農業経営されている方で後継者がいらっしゃらない方、ソーラーシェアリングを導入することに不安を感じる方もいると思いますが、農業や作物自体に影響はそんなにありませんので、試してみる価値はあると思います。」とのコメントです。
SUNファーム市原の取組
ソーラーシェアリングの実験農園「SUNファーム市原」ではこれまで主に土を使わない栽培をメインとしていましたが、最近では土耕栽培も積極的に進めており、土づくりや土耕栽培の運用に関するノウハウを蓄積しています。
これまで使われていなかった農地を整備し、不耕起栽培による枝豆作りをはじめました。
※栽培期間3~8月
※不耕起栽培
不耕起栽培とは、簡単にいうと農地を耕さないで作物を栽培する農法です。作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培します。耕起栽培に比べて、作業時間が短縮でき、畑地に生息するミミズ等の土壌生物も増えるので土が豊かになるといった利点があります。
枝豆(複数品種)を播種し、苗作り
土地を開墾し、畝ができました
枝豆の苗を定植しています
枝豆定植後、土になじみ順調に生育中
枝豆(富貴・あじみのり)を栽培
順調に生育しているようです
今後は青パパイヤの栽培も準備中
まとめ
「ソーラーシェアリングと土耕栽培」の組み合わせは農業の可能性を広げます。
土耕は昔ながらの伝統的な手法や長年の経験から培われたものが多く、新しい仕組みに対する不安もあるでしょうが、ポイントを整理すると相乗効果の面が多いようです。