アクアポニックスの仕組みをご紹介
アクアポニックス(Aquaponics)は水産養殖(Aquaculture)と水耕栽培(Hydroponics)を組み合わせて作られた造語で、名前の通り水産養殖と作物栽培を同時に行う循環式栽培システムです。
<アクアポニックスの仕組み>
私たちが与えたエサを食べ養殖魚が育ちます。魚が出した排せつ物は水に溶け、魚にとって毒であるアンモニアになります。
この水を使い続けると魚は死んでしまいますが、微生物と作物がこの問題を解決してくれます。微生物によりアンモニアは亜硝酸塩に、別の微生物の力により亜硝酸塩は硝酸塩へと変換されます。硝酸塩は魚に無毒な上、作物の肥料となるので、硝酸塩を含んだ水を与えることで作物が育ちます。
微生物の反応と作物栽培を経てキレイになった水は水槽へと戻され、再び魚の養殖に使われます。
これら一連の反応を繰り返し行っているのが、アクアポニックスです。
アクアポニックスの3つのメリットがあります!
少量の水での養殖・栽培が可能
有機栽培の野菜が収穫できる
教育素材として活用
少量の水での養殖・栽培が可能
アクアポニックスでは微生物と植物の力により水が浄化されるため、繰り返し同じ水を使用することが可能です。つまり水の循環を伴う栽培方法なので、潅水を行う一般的な農法に比べ、少量の水で十分な収穫量が確保できる水の利用効率が高い(= 節水効果が高い)農法です。
有機栽培の野菜が収穫できる
作物に農薬散布を行うと、水槽に流れ込み魚が死亡してしまうので、アクアポニックスでは農薬を使いません。
また、作物の養分には魚の排せつ物を分解した成分が使われるため、化学肥料も不要です。つまり、アクアポニックスで栽培された作物は完全無農薬・化学肥料不使用の有機農法で作られた作物となります。
食の安全性が気になる方たちも安心して口にできます。
小さな地球を体感でき、教育素材としても活用できる
アクアポニックスでは魚から出た排せつ物を微生物が分解し、それを養分として作物が育ちます。
さらにこれらの行程によってキレイになった水は再び魚の養殖に利用されます。これらの一連の循環反応はまさに地球上で起こっている有機物をとりまく反応そのものと言えます。つまり、小さな地球を手軽に体験することができ、教育素材としても活用価値が大きいと考えられます。
実際に海外では教育活動の一環としてアクアポニックス施設が活用される事例が多数あります。
アクアポニックスという単語は20世紀に誕生しました。しかし、養殖魚の排せつ物を肥料として利用し、農作物を育てるという考え方自体は実は古代から存在していました。
西暦1000年頃にはマヤ族やアステカ族がアクアポニックスの原型とも言える農法を行っていた記録が残っています。彼らは「チナンパ」と呼ばれる湖底の泥を盛土した浮島を作り、栄養分を豊富に含む運河や湖に浮かべ、その上で作物を栽培していたと言われています。
アジアでもアクアポニックスの原型と呼べる農法が古くから行われていました。
中国南部、タイ、インドネシアではドジョウ、うなぎ、コイなどが水田で育てられていました。特に中国では魚を育てた池からあふれた水を下流に設置した稲作や畑作に使うといった、アクアポニックスに通じるところが多い栽培が行われていたそうです。
現代につながるアクアポニックスシステムの研究は1970年代からアメリカの大学を中心に行われてきました。
一連の研究の結果「魚の養殖を行う水槽」「微生物の力により魚の排せつ物を無毒化し植物の養分に変えるろ過槽」そして「作物の栽培槽」という、基本的な仕組みが確立され、現在のシステムの礎となっています。
世界初の営農目的アクアポニックス施設は1980年代半ばにアメリカのマサチューセッツ州に建設されました。
その後は一般的な栽培に比べ大幅な節水効果があるアクアポニックスの特徴を生かして、水資源問題を抱えるハワイ諸島やオーストラリアなどを中心にアクアポニックスによる営農栽培が広がっています。
日本での認知度はまだまだ低いのが現状ですが、2017年には国内初の営農施設が大分県で稼働し始めました。
新潟県でも2019年の稼働に向けて新たな施設の建設が進んでいます。アクアポニックスは完全無農薬栽培なので、食の安心安全への意識が高まっている国内で更に広がることが期待されます。
実例1:ハワイにあるアクアポニックス農園
農園名 :ILI‘ILI FARMS
設立 : 2013年
URL : https://www.iliilifarms.com/
敷地面積 : 約4,047㎡(1,224坪)
販売先 : 地元スーパー(Down to Earth stores acro, Foodland, Times,Whole Foods)、市場で直売
温暖な気候条件での屋外栽培
地元では一般的なティラピア
認証有機野菜として販売
実例2:国内初の営農アクアポニックス施設(大分県)
農園名 :ホリマサシティファーム(大分パイロットファーム)
設立 : 2016年
URL : http://horimasacf.com/
敷地面積 : 約2,800㎡(909坪)
販売先 : ハワイ発サラダ専門店(アロハサラダ原宿)など
太陽光下でのハウス栽培
ニジマス
LED照明下での施設栽培
日本国内での営農利用の広がり
日本国内では約20機関がアクアポニックス関連の活動を行っています。
また、2019年の稼働開始に向け、施設建設が進んでいる法人もあり、今後の日本国内での営農施設としてのアクアポニックス利用の広がりが期待されます。
株式会社プラントフォームHPより:新潟県長岡市で施設建設中
「水が魚と野菜を育てるアクアポニックスという新しい農法。土を使わず、勘と経験も必要ない、IoT有機生産で安心と美味しいを実現。日本の新しい食料生産スタイルが始まる」
太陽光発電と組み合わせた新しいシステム
養殖水槽・ろ過槽(微生物の住処)には日光が不要なので、遮光率を気にせず上部に太陽光パネルを設置可能。
熱帯・亜熱帯地域、日本の夏季なら屋外栽培も可能。作物生育に影響がない遮光率での太陽光パネル設置も可能。
<再生可能エネルギーとの融合>
少量の水で栽培可能なアクアポニックスの特徴と太陽光発電による安定的なエネルギー供給を組み合わせることにより、水資源に乏しい、エネルギー供給が不安定といった問題のある地域(島しょ地域、内陸部、乾燥地帯など)での食料供給の安定化に貢献することが期待できます。
SUNファーム市原にアクアポニックス
弊社の農園(SUNファーム市原)でもアクアポニックスの設備が導入されました。
養殖ではホンモロコ、錦鯉、メダカ、作物はバジル、ほうれん草、クレソンが栽培されています。
ここでもソーラーシェアリングの技術が導入されており、太陽光エネルギーの電力を動力源であるポンプに送る事で、環境にも優しくより独立性の高いシステムになります。
植物工場や都市型農業が注目を集める昨今、小規模で多種多様な栽培を行う技術として期待されています。
ホンモロコは淡水魚で、小振りですが一度食べると病みつきになると言われるほど、大変美味しい魚です。料亭のメニューでも見られることがあるようです。
SUNファーム市原では産卵も確認されており、順調に育っております。
メダカは複数種を育てており、「楊貴妃」「白メダカ」「マリンブルー」と言った色鮮やかな観賞用のメダカが揃っています。
実際に目にすると、メダカがこんなにきれいなのかと驚かされます。販売単価が高いため、養殖の仕組みと販路が整えばビジネスとしての価値も高いと思われます。
錦鯉は「大正」「昭和」「紅白」「丹頂」等の品種が養殖されており、比較的小スペースでもちゃんと生育しております。
今後また新しい淡水魚の養殖が検討されており、様々な魚を限定されたスペースで養殖することが可能になるため都心、狭い空きスペースを有効活用するご提案ができるようになるかと思います。
アクアポニックスの歴史について
https://aquaponics.co.jp/history-of-aquaponics/
https://www.milkwood.net/2014/01/20/aquaponics-a-brief-history/
アクアポニックスのメリット
以下の無料写真素材HPからダウンロード
https://www.photo-ac.com/
実例1:ハワイにあるアクアポニックス農園
https://www.iliilifarms.com/ このページから写真を引用
実例2:国内初の営農アクアポニックス施設(大分県)
http://horimasacf.com/ このページから写真を引用